調査地ダナムバレイ
私たちの調査地について説明します。
調査地概要
場所:ダナムバレイ森林保護区(438u)内
詳細:ボルネオ・レインフォレスト・ロッジ 観光用ロッジ周辺
(Borneo Rainforest Lodge:以下略称 BRL)
面積:約2ku
北緯5°01’19.60, 東経117°44’35.82
私たちが「調査地ダナムバレイ」というときは、このBRL周辺のことを指しています。
2004年に新たな野生オランウータンの調査地を探す中で、ダナムバレイ森林保護区の特にこのBRL周辺での調査を希望しましたが、BRLは観光客用の施設のため、研究者の滞在は認められていませんでした。
様々な経緯があり、最終的に調査を許可されました。
調査地を新しく拓くためには様々な困難がありましたが、その甲斐あって、10年以上たった現在も調査を続けられています。
今後もこの場所で長期調査を続けていきたいと関係者一同切望しています。
(写真:調査地全景)
高台から撮影。
原生林が広がる調査地。
手前に映っている建物群が、ボルネオ・レインフォレスト・ロッジ(BRL)です。
ダナムバレイ/施設
ダナムバレイにはサバ財団が経営する施設が2か所あります。
ボルネオ・レインフォレスト・ロッジ(BRL)
ボルネオフォレスト・ロッジの概要
- 観光客用の宿泊施設
- サバ財団の事業の一環として、1995年に開業。
- 場所は保護地域の境界線から10qほど入った保護地域内。
- 宿泊客には必ずガイドが付き添い、ロッジ周辺で野生動植物を観察するというエコツアーが行われている。
- 客室: 31部屋(温水シャワー付き)
- 宿泊料金: 約21000円〜/人/泊 (三食、アクティビティ含む)
(宿泊料金は人数や部屋タイプにより変化します)
宿泊客は、イギリス人やアメリカ人が多いですが、日本人も多く、1週間に最低1組は、日本人のグループをみかけます。
年々人気が高まっていて、7月、8月は毎年ほぼ満室です。
私たちは調査を始めた当初は許可を得て従業員用のロッジに滞在し、
2010年以後は京都大学野生動物研究センターが、保護区を管理しているサバ財団と共同で調査地内に建設した「クアラ・スンガイ・リサーチステーション(KSDRS)」に滞在して調査をしています。
ダナムバレイ・フィールド・センター(DVFC)
Danum Valley Field Center (DVFC)
- 1986年にLondon Royal Societyの支援を受けて研究者用宿泊施設としてサバ財団が設立。
- BRLから車で1時間半、直線距離で10kmほど離れている。
- 宿泊施設の他にも、実験室や図書室、会議室などの設備が整い、衛星によるインターネットの接続、調査路、観察用タワーなどが完備されている。
また現地スタッフによる調査アシスタント、各種データが提供され、研究者にとって充実した研究支援がある。
私たちも月2〜3回の割合でこの研究基地を訪れ、植物サンプルの処理をしたりしています。
DVFCは観光客でも利用できるのですが、あまりに多くの観光客が訪れるようになり、調査・研究活動に支障がでるようになったため、観光客専用の施設として1995年にBRLを設立した、という経緯があります。 現在でも、事前に許可をとれば観光客でも訪れることはできます。キャンプサイトなどもあるので、「高いお金は払いたくないが、原生林を見たい」、というバックパッカーなどには人気のようです。
ダナムバレイ/気候
乾季と雨季
これはダナムバレーの月平均降水量をしめしたグラフです。
一応、4月〜9月から比較的雨の少ない乾季、10月から3月は比較的雨の多い雨季、と言われています。
しかし乾季であっても乾燥限界である月降水量60mmを下回ることはないので、厳密な意味での乾季は存在しません。
気温は一年中、28℃前後(Max31.6°〜Min22.6°)で一定です。
洪水
毎年、12月から2月は特に雨が多く降り、洪水になることも珍しくありません。
2008年は2月に洪水が起き、調査が中断してしまいました。 左の写真が通常の様子、右上がほぼ同じ場所を洪水の時にとった写真です。 近くの川が氾濫し、私たちが住んでいる高床式の家の床下まで水がきました。
発電機が浸水し、川から取水していた水道も使えなくなりました。 さらに町に続く道路は数カ所で橋が落ちてしまい、四輪駆動車でかろうじて川を渡る有様でした。
しかし、雨がおさまった後の復旧は早く、1ヶ月後にはほぼ正常に戻りました。 これは保護区周辺で伐採を行っている業者が、道路の整備をしたからです
ダナムバレイ/植物相・動物相・土壌
土壌
地層:第三紀堆積岩類の露出地帯
Crystalline Basement, Chert-Spellite(チャート・スプライト累層=上部白亜紀〜始新世初期の玄武岩とこれに伴う屑岩類、チャートから成る), Kuamut
植物相
高等植物:139 科562属1300種(フタバガキ科, トウダイグサ科, アカネ科, 他)
地衣類(樹上性が多い)
菌類(ヤコウタケなど)
代表的なキノコ:Fluorescent Fungus (Mycena Illuminans) =ヤコウタケの仲間
代表的な樹種:フタバガキ科(Parashorea malaanonan, P. tomentella, Shorea johorensisなど種)
フタバガキ科以外の高木:Koompassia属, Diospyros属, Durio属
中低木:Euphorbiaceae科, Rubiaceae科など
動物相
哺乳類:125種(スマトラサイ, ヒゲイノシシ, ジャコウネコ, etc.)
鳥類:340種(ブタゲモズ, オニヤイロチョウ, etc.)
爬虫類:75種(トビトカゲ, ボルネオ・マムシ, etc.)
両生類:60種(ウォーレス・トビガエル, ツリー・フロッグ, etc.)
魚類(淡水魚):40種(コイ科Barbodes sp.など)
節足動物:150,000種以上(ガ:6,000種以上, チョウ: 350種以上, 甲虫:10,000種以上)