日本オランウータンリサーチセンター

dr201807

2018年7月 ダナムバレイ調査報告

7月上旬、乾季が始まったばかりのダナムバレイを訪れました。
調査を始める前に、まずは 森をぶらぶら歩いて森林の開花・結実状況を把握するのが恒例です。
今年は、植物の開花率が少なかったため、これから始まる果実期も小規模なものになりそうでした。
今回は、一斉開花・結実期の予兆であるフタバガキ科の開花をほとんど確認できなかったので、残念ながら今年も一斉結実は見送りになるようです。

 

しかし、オランウータンの大好物であるテルミナリアという果実がちょうど結実していた時期だったので、「これは簡単にたくさんのオランウータンに会うことができるぞ」、と今回の調査が楽なものになることを予測してニヤニヤしてしまいました。
このように、オランウータンの大好物な果実が調査地のあちこちに結実している期間は、オランウータンを探して森の中を探し歩かなくても、旬の果実のある樹木を見てまわれば、簡単にオランウータンに出会うことができます。

 

案の定、今回の滞在では、たくさんのオランウータン達の姿を確認することができました。
今回の野外調査で、特に興味深かったのは、フランジ雄の交代が起こっているのかもしれないと思うような観察をすることができたことです。
フランジ雄は、どこからかやってきて数年の間その姿を頻繁に見かけますが、やがていなくなってしまいます。
ダナムバレイでは、ここ数年ばかり、ABU(アブ)という名前のフランジ雄が、調査地で頻繁に観察されていましたが、2017年3月を最後にその姿を見なくなりました。
そして、今回の調査では、ABUがいなくなる少し前2016年から滞在しているSON(ソン)というフランジ雄と、2018年4月に新しく調査地周辺で確認されるようになったKONG(コン)というフランジ雄の2頭を頻繁に見かけました。

 

 

【フランジ雄Son】

 

 

 

【フランジ雄Kong】

 

 

この2頭は1kmほど離れて距離を保ちつつも、お互いを強く意識して遊動しているようで、1日に何度かそれぞれのロングコールを聞きました。
おそらく、調査地に数本しかないテルミナリアの果実の木を巡って、お互いをけん制しながらも、回避しつつ、それぞれが採食できるように動いていたのでしょう。

 

古株のフランジ雄がいなくなり、新しいフランジ雄達を頻繁に見かけるようになると、新しい展開にわくわくする気持ちもありますが、ABUはどうしたのだろう、というさみしい気持ちも残ります。
今後、オス同士の関係がどう変化していくのか、そして、メス達とどのような関係を築いていくのか、大変楽しみです。 (金森 朝子)

 

 

【調査助手と(左から金森、Eddy、 Elny、Jaidi)】


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